口径　６５ミリ
　全高　６２ミリ
　高台　５２ミリ

　暁の怜悧か黄昏の透徹か
　交淡如水の気高き趣きを具えるは、
　そうそう見得るものではないのだ。
　武骨なる質（たち）に捉われる分なれど、
　その実、淑やかなる風姿こそが、
　密かなる本分であると喝破すべきなのだ。
　その色香、その立居振舞、その肌触り、
　薫風嫋嫋とした颯爽さを纏いつつ、
　意志堅固なる意気を見て取るに
　過不足の在ろう筈もなし。
　洋々とした潤いの酒、相応しく、
　心の襞に染み渡る白玉であることを知るは、
　詩歌嗜む心にも似る遊興なり。
　夜のしじまを覚える者に煌く、一献。

　口径　７３ミリ
　全高　５８ミリ
　高台　４８ミリ

　満々と湛える酒恋しらに、
　諸手に伝うは手弱女の温雅の如く。
　色めくは朽葉であり伽羅であり橙であり、
　抱くは懐郷の想いに似るを知り得る。
　何処にか馳せようとも傍らに在る、
　その伴侶としての意は忘れるべくもない。
　清廉にして錦繍、閑雅にして風趣、
　真景麗しきこと当然至極の言を待たず、
　美酒嗜むに感嘆あるもまた然りとなる。
　揺蕩うは愛しみ満ちる吟香の酒、
　ふくよかなる柔肌に薄紅映えるとき、
　得難き深更の星月もまた、
　その豊満なる輪郭を露にするのである。

　口径　６５ミリ
　全高　６４ミリ
　高台　５０ミリ

　霞立つ仄かな憂いを含む微笑。
　斯くの如き柔和な顔（かんばせ）には、
　その侘び故の美しさが在る。
　無骨ではなく脆弱ではなく、
　その芯のある器には、
　一滴の落涙が見てとれるのである。
　然りとてその落涙は憂いの美であることが
　存在の孤高を揺るがせにしない、
　精髄であるのだ。
　だからこそ瑞々しき酒が其処には
　相応しいのである。
　馥郁という麗句が如何にも感じ入る、
　と或るひと時に、
　この器が其れを支えているのである。
　他の何ものでもない、この器こそが。